Necessary Place
―― ずっと、居場所などないと思っていた。 俺の考えは貴族には異質で、到底受け入れられるものではなかったし、平民にはただの戯言にしか映らなかったから。 だから俺は一人でいつも他の者達の間にある考えや雰囲気を享受できない者として、落ち着かないどこか空々しい世界に生きていた。 その孤独感がひどく耐えられなくなる時もあった。 いっそ他の貴族の連中と同じように、平民を民草と呼び自らの家柄という中身のないものを盾にえらぶってしまおうか・・・・ それとも家も地位もすべて投げ捨てて、どこか別の土地にでも逃げるか・・・・ そんな風に思った事もなかったわけじゃない。 どちらを選んでも、今よりはずっとましになるような気がしていた。 しかしできなかった。 家を捨てるには、その名において出来ることがまだあるような気がしてできず、貴族ぜんと振る舞うおうにも・・・・あの火事の事は忘れられなかった。 俺が今生きている土台に何人もの庶民の命があること。 それは忘れることなどけしてできない事だし、忘れてはならない事。 だから・・・・俺は次第に諦めるようになった。 何をしても他の連中は皆わかってはくれない、と。 そのうちに役職も検非違使達に移行するようになってますますそう思った。 俺にできることなど何もなく、俺は一生失われた命を背負いながら居心地の悪い世界で居心地の悪い思いをしながら生きていくのだと。 そんな諦めが俺の中にじょじょに浸透してきていた頃 俺の前に、お前が降りてきた 龍神の神子と呼ばれるお前が 最初は、疑ったさ。 だいたい何を考えているのかはわからないが、妹の千歳が院の元に龍神の神子だという名乗りを上げていたしな。 なによりお前が、花梨があまりにものを知らないただの娘だったから。 だから俺は龍神の神子を騙らせられるんじゃないかと思ったんだ。 もの知らずなお前が他人の都合でいいように利用されるのはさすがにかわいそうだと、そう思ったから俺はお前が2人の星の一族とかいう子どもと雛遊びのように八葉を探すと言うのに付き合ったんだ。 半分は忘れかけていた正義感、半分は退屈しのぎだったかもしれない。 ・・・・だが、そのうちにその考えは薄れていった。 『勝真さん〜、わかりません〜〜』 情けない顔で京では常識の事を聞いてくる花梨がおかしくて、いつも笑いながら教えてやった。 『勝真さん、がんばりましょうね!』 にこにこ笑ってお前がそういうから、頑張るの意味を思い出した。 『勝真さん!勝真さん!』 親鳥にまとわりつく小鳥みたいにちょこまか俺の周りを動き回るお前が可愛くて、つい頭をくしゃくしゃ撫でる癖がついちまった。 撫でた髪は柔らかくて、気持ちが良くてそのままずっと梳いていた気にさせられた。 ―― そして気づいた。 お前の側は、ひどく居心地が良いことに。 そう、お前は俺たちの京の常識など欠片も知らず、気持ちいいほどあっさりと俺の居心地の悪さを蹴散らしたんだ。 今までどこにも見いだせなかった居心地の良さをいとも簡単に俺に与えて、お前はなんの気負いもない。 いや、気づいてないんだな。 お前にとってはそれが普通で何も特別なことじゃないんだ。 ・・・・でも俺にとってはなにより特別な事だった。 花梨の側は常に暖かくて、小さくて良く動く体を抱きしめたらもっと暖かいのかもしれない、なんて俺が思っている事、お前は考えもしないだろう? 龍神の神子として毎日怨霊やらなにやらと戦っているお前を護ってやれること、護れる力があることを俺がどれほどありがたく思ってるかも。 1つの笑顔、1つの言葉に俺が一喜一憂していることも、な。 でも今は気づかなくていい。 俺はまだ諦めたと思っていた事に再び踏み出す勇気を持てていないから。 今の俺じゃお前に居心地のいい場所をもらうだけで、あたえてやれないから。 だが、いつか俺にもお前にとって居心地のいい場所を作れるようになったら・・・・ ―― その時は、絶対お前を捕まえて離してやる気はねえから、覚悟しとけよ 無邪気で、無自覚な大切な俺の神子殿 〜 終 〜 |
― いいわけ(汗) ―
う〜んと・・・・あはははは〜、やっちゃいました。
一応、泰継さんのモノローグと対になってます。
時期的には恋愛イベント第2段階を過ぎたぐらいでしょうか。
重さやしっとり感は泰継さんの方が格段にあるんですが、勝真さんだと・・・・やっぱりどこか甘め??(嘘!?)
最後の『俺の神子殿』の元ネタは某御人の恋愛イベント内のネタです(笑)
あの台詞、是非智一さんボイスで聞いてみたかったな〜。
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